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  • Chihiro SASAKI

厚生労働省に陳情に行きました

代表理事の佐々木です。

2021年7月1日14時、患者の会の運営メンバー(代表理事・理事2名)が厚生労働省に陳情に行きました。


大臣官房審議官 横幕章人さまと面会し、下記①②を要望し、③の状況を訴え善処を求めました。 ①全国一律で全ての術式の甲状腺眼症に対する眼窩減圧術がK 235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)の適用となること。 ②日帰りステロイドパルスや眼へのステロイド注射等の甲状腺眼症に対する非標準的治療が引き続き保険適用となり、かつ新規にそれらの治療が開始される都道府県で保険適用となること。 ③甲状線眼症に対する眼窩減圧術の保険適用が都道府県により異なること、術式により異なること、同じ都道府県で同じ術式でも医療機関により異なること。


陳情は以下の流れとなりました。 まず減圧術の保険適用に関する患者の会の見解を説明しました。 その後 質疑応答となり、陳情者側と被陳情者側で活発に意見交換をしました。 それから患者の会の有志メンバーの方からお寄せいただいた患者の「声」をお伝えしました。

最後に記念撮影をしました。


厚労省に甲状腺眼症に対する眼窩減圧術の保険適用の問題をお伝えすることができ、また意見交換を通して、今後 当患者の会が陳情事項を達成するために取り組んでいくことも見えてきましたし、有意義な時間となりました。


厚生労働省に陳情にいくというめったにない経験ができておもしろかったです。


運営メンバーで陳情の準備を進め、有志メンバーが「声」を寄せ、会員のみなさんが応援してくれました。

また多くの方にお力添えをいただきました。

みなさまのおかげで今回の陳情が実現しました。

どうもありがとうございました。




今回提出した陳情書の内容を下に公開します。




陳 情 事 項 

「甲状腺眼症に対する眼窩減圧術について、全国一律で全ての術式の手術を

K235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)の保険適用としていただきたい」


1.陳情の趣旨

甲状腺眼症に対する眼窩減圧術(以下、本状では眼窩減圧術とは甲状腺眼症に対する眼窩減圧術を指す)について、全国一律で全ての術式の手術をK235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)の保険適用としていただきたく、陳情いたします。

2.陳情の理由

眼窩減圧術は甲状腺眼症に対する唯一の根治的な手術療法です。しかし、2018年以降、甲状線眼症に対する同手術の保険適用の範囲が狭められ、多くの患者が選択した医療機関で選択した術式での手術を保険で受けることができなくなっています。


3.陳情の背景


3.1 疾患の具体性

甲状腺眼症はバセドウ病や稀に橋本病に伴ってみられる眼窩組織の自己免疫性炎症疾患です。その結果、醜形(眼球突出、眼瞼後退、眼瞼膨張、結膜の充血や浮腫、涙丘の八隻や腫脹)、視機能障害(複視、視力低下、視野欠損)、眼や眼の周囲の痛み、流涙、眼瞼運動障害(兎眼、眼瞼遅滞)、眼球運動障害、角膜障害(びらん、潰瘍、混濁、壊死、穿孔)、視神経症、網膜障害といった多彩な眼症候を呈します(バセドウ病悪性眼球突出症の診断基準と治療指針作成委員会(2018)「バセドウ病悪性眼球突出症(甲状腺眼症)の診断基準と治療指針2018 第2次案」.)。

同疾患の活動期の治療にはステロイド療法や放射線治療を行います。非活動期の治療には手術療法を行います。


3.2 眼窩減圧術について

眼窩減圧術は甲状腺眼症に対する根治的な手術療法です。同手術は、甲状腺眼症による眼球突出や視神経症、視力低下、複視、異物感、ドライアイ、球後痛、眼精疲労、まぶしさ等の症状に対して、眼の周囲の骨(眼窩)を削ったり眼の奥の脂肪を切除したりすることで眼球が入るスペースを拡大し、症状を改善する手術です。


3.3 眼窩減圧術を行っている施設

国内で眼窩減圧術を行っている主な施設として、下記の8施設が挙げられます。

①オリンピア眼科病院(医療機関コード:1311370147):東京

②オキュロフェイシャルクリニック東京(医療機関コード:1310235416):東京

③新前橋かしま眼科形成外科クニリック(医療機関コード:1010112587):群馬

④愛知医科大学付属病院(医療機関コード:2317700017):愛知

⑤大阪医科大学付属病院(医療機関コード:2710900503):大阪

⑥大阪大学医学部付属病院(医療機関コード:2719900249):大阪

⑦神戸海星病院(医療機関コード:2810203659):兵庫

⑧九州大学病院(医療機関コード:4019819897):福岡


3.4 眼窩減圧術の術式とアプローチ方法

眼窩減圧術には下記の術式があり、それぞれの術式に利点と欠点があります。

(ア)眼窩内壁と下壁を取る手術

(イ)眼窩外壁と深部外壁を取る手術

(ウ)眼球の後ろの脂肪を取る手術

(エ)まぶたの脂肪を取る手術


また、アプローチには大きく分けて4通りあります。

(a)口腔内からのアプローチ

(b)鼻腔内からのアプローチ

(c)皮膚からのアプローチ

(d)結膜からのアプローチ


3.5 眼窩減圧術の保険適用に係る事態

2018年ごろからの眼窩減圧術の保険適用に関する流れとして、以下の8つの事態が起こっています。

1)2018年、社会保険診療報酬支払基金 愛知支部が、眼窩減圧術を保険適用から除外する。

その理由は以下であるとする。

・甲状腺眼症に対する眼窩減圧術は美容整形と同じである。

2)2018年、社会保険診療報酬支払基金 東京支部が、施設2で行われていた眼窩減圧術の適応手術を眼窩内腫瘍摘出術(深在性)から点数の低い眼窩内腫瘍摘出術(表在性)へと変更する。

3)2020年8月、全国の保険の審査会が以下を通達する。

・骨を取る眼窩減圧術は眼窩内腫瘍摘出術(深在性)、取らない眼窩減圧術は眼窩内腫瘍摘出術(表在性)とする。

4)下の2020年度の健康保険の手術の解説本において、執筆者が甲状腺眼症を眼窩内腫瘍摘出術(深在性)の適応疾患から外し、点数の低い眼窩内腫瘍摘出術(表在性)の適応疾患とする。

・辻英貴(2020)「第4章 眼」.寺島裕夫(監修)『診療報酬点数表 手術術式の完全解説 20-21年度版』医学通信社』.

5)2020年10月、社会保険診療報酬支払基金 群馬支部が施設3に次の通達を出す。

以下の2つの条件を満たさない眼窩減圧術は眼窩内腫瘍摘出術(深在性)ではなく眼窩内腫瘍摘出術(表在性)とする。

・皮膚を切開する。

・眼窩骨の一部を外して手術終了後に戻す。

6)2020年10月、当患者の会が以下の4か所に公開質問状を送付する。

・社会保険診療報酬支払基金 東京支部 

・社会保険診療報酬支払基金 群馬支部 

・社会保険診療報酬支払基金 本部 

・日本眼科学会 事務局 

そして、2020年11月、社会保険診療報酬支払基金 東京支部および群馬支部より

以下の回答を受け取る。

「送付先のひとつである社会保険診療報酬支払基金 理事長 宛ての質問状へのご回答につきましては、当支部の回答のとおりです。」

「ご質問にあったK235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)とK234眼窩内腫瘍摘出術(表在性)については、原則として、眼窩骨の一部を外し、眼窩内に到達して手術操作を実施している場合はK235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)、前眼部から眼窩骨と眼球の間から眼窩内に到達している場合はK234眼窩内腫瘍摘出術(表在性)がそれぞれ最も近似する手術と審査判断したものです。」

7)2020年12月、群馬県眼科医会が施設3に以下を通達する。

「骨の処理(皮膚切開をして眼窩骨の一部を外し、手術終了時に戻す)を施行していない場合は、K235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)は算定不可です。」

8)2021年4月、社会保険診療報酬支払基金 東京支部が、施設2で行われている眼窩

減圧術を再度K235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)からK234眼窩内腫瘍摘出術(表在性)へと変更する。その決定の根拠は以下であるとする。

「B:療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上過剰・重複となるもの」


3.6 眼窩減圧術の保険適用に係る事態に対する疑義

標記について、以下の9つの疑義があります。


A)術式ア,イ,ウそれぞれの眼窩減圧術に関して、国内に保険が使える施設と使えない施設がある。【事態1】

B)術式ア,イの眼窩減圧術に関して、東京都の中でも施設により保険適用が異なる。

【事態2,8】

C)術式ウの眼窩減圧術の保険適用が都道府県によって異なる。【事態2,5,7,8】

D)術式ア,イ,ウそれぞれの眼窩減圧術に関して保険適用の基準が明確でない。

【事態1,2,3,4,5,6,7,8】

E)術式ウの眼球後方の脂肪減圧術が、論拠の明示なく眼窩内腫瘍摘出術(深在性)ではなく、眼窩内腫瘍摘出術(表在性)であるとされている。【事態2,8】

F)甲状腺眼症が論拠をはっきり示されることなく眼窩内腫瘍摘出術(深在性)の適応疾患から外され、眼窩内腫瘍摘出術(表在性)の適応疾患とされている。【事態4】

G)眼窩減圧術を眼窩内腫瘍摘出術(深在性)とすることに関して、事実と理由の言明なく、皮膚を切開することと、骨を取り外して付け直すという制限が入っている。

【事態2,5,6,7】

H)群馬県医師会が、眼窩減圧術をK245眼窩内腫瘍摘出術(深在性)とする条件に、社会保険診療報酬審査支払基金 群馬支部・東京支部から当患者の会への回答にはなかった次の項目を独自に追加している。皮膚切開をして眼窩骨の一部を外し、手術終了時に戻す【事態7】。

I)施設2で行われている眼窩減圧術が論拠の明示なく「医学的に保険診療上過剰・重複となるもの」とされている。【事態8】


4.前章の事態は何をもたらすのか


4.1 患者が眼窩減圧術を保険で受けることができなくなる

まず、事態1により、施設4で眼窩減圧術を希望する患者が保険で手術を受けることができなくなっています。

また、眼窩減圧術は高度な技術を必要とする手術です。事態2,5,8により、施設2と3では高い技術を要しリスクもある手術をそのような低い点数では実施できないとのことで、保険での手術が停止されていました(施設3)、あるいは停止されています(施設2)。


4.2 患者が侵襲の大きい手術を受けることを強いられる

かつては、眼窩減圧術は眼窩の骨を削ったり、皮膚を切開したりする術式ア,イが主流でした。しかし、施設2と3で高い技術を用いた術式ウが行われるようになりました。それにより、患者は骨を削らず皮膚を切開しない侵襲の小さい手術、体への負担の少ない手術を受け、術後短期間で社会復帰できるようになりました。

しかし、事態3,5,6,7は、全国の保険の審査会や社会保険診療報酬支払基金、群馬県医師会が、眼窩減圧術をK235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)とする条件として、本来ならする必要がない皮膚の切開や眼窩の骨の処理を求めています。そして、その結果、患者が身体的にも精神的にも負担の大きい術式での同手術を強いられています。


4.3 日本国内で眼窩減圧術を行う医療機関がなくなる

眼窩減圧術は高度な技術を要する手術であり、誰もができるものではありません。日本国内に同手術が可能な医療機関が少ないのはそのためです。前述の状況の解消のためには、多くの医師が同手術をしたいと思うように、高い技術に応じた高い点数が同手術に付けられるべきです。逆に同手術にK234のような低い点数を設定した場合、技術を習得し同手術を行う価値を見い出せず、同手術を行う医師がいなくなってしまい、私たち患者は国内で同手術が受けられなくなってしまいます。


5.日本の甲状腺眼症の医療の過去・現在


5.1 甲状腺眼症の医療の過去

日本国内において甲状腺眼症は絶望の病でした。

甲状腺眼症は活動期に適切な治療を受ければ良くなる疾患です。しかし、日本では、同疾患の診断・治療ができない医師がそれに気づかないまま、あるいはできると偽って患者の診断・治療をしており、そのため多くの患者が活動期に適切な治療を受けることができず、病状を悪化させてしまっていました。

また、日本には甲状腺眼症の診断・治療ができる医師が少なく、患者は診断・治療を受けるために遠方の医療機関に通院する必要があります。その金銭的・時間的負担は莫大であり、そのため治療を受けることができないでいた患者も少なくありませんでした。

さらに、かつては日本国内では施設1が甲状腺眼症の唯一の専門の病院として有名であり、多くの患者が施設1に通院していました。しかし、施設1では、主に次の理由により、患者が眼窩減圧術を受けることを望んでも医師が同手術を実施しない事例がありました。施設1では侵襲の大きい術式アが行われていたこと。術式アは高い精度で眼球突出を改善することができないこと。施設1では手術に際して約1か月の入院が必要であり、(い)40床の病院で受け入れられる患者数に限りがあったこと。(ろ)施設1は眼科病院であるため患者の疾患による醜形に苦しむ気持ちが尊重されなかったこと。眼窩減圧術が査定されたり保険適用が外されたりしないように、施設1では症状が重い患者を重点的に治療していたことです。

また、施設1では3週間の入院でのステロイドパルス療法が行われていましたが、主に前段落い,ろの理由により、活動期の患者に対して積極的なステロイドパルス療法が行われない事例もありました。


5.2 時代の変化

5.1の時期を経て、施設2と3で侵襲の小さい術式ウが日帰りで行われるようになりました。甲状腺眼症は、30代から50代の女性が罹患することが多い疾患です。日帰りの手術が始まったことで、仕事や育児等で忙しい世代の女性が手術を受けて短期間に回復し、長く休むことなく社会復帰できるようになりました。また、術式ウは他の術式よりもいっそう高い精度で眼球突出を改善することができます。このような技術の進歩により、甲状腺眼症に苦しみ絶望した多くの患者が眼窩減圧術を受けることができるようになりました。

また、施設2と3では海外では一般的である甲状腺眼症に対する日帰りでのステロイドパルス療法が行われ、多くの患者が活動期に治療を受けることができるようになりました。現在、国内の他の医療機関でも甲状線眼症に対する日帰りでのステロイドパルス療法が行われるようになっています。


5.3 患者の現状

3.5の一連の事態により眼窩減圧術が保険で行えなくなった施設が3か所あります。

まず、事態1により施設4では同手術に健康保険の適用がなくなりました。それにより、愛知県やその近隣県に居住している当患者の会の会員は、同手術を保険で受けるために他県まで通院しなくてはならなくなりました。それに係る時間的・金銭的負担に大変苦しみ、同手術を受けることをあきらめざるを得なくなった会員もいます。

また、事態2により施設2では保険での眼窩減圧術が打ち切られ、自費での手術のみ受けることが可能となっていました。事態6を受けて施設2では同手術が再開されたものの、事態8によって再度中止となっています。そのため、全国から施設2に通っている当患者の会の会員は、同手術を保険で受けるために群馬まで行かなくてはならなくなり、患者本人や付き添いの家族は時間的・金銭的に大きな負担を強いられ、同手術を受けることを断念せざるを得なくなった会員もいます。

さらに、2020年9月から10月にかけて、事態5により施設3でも眼窩減圧術を保険で行うことができなくなり、同手術に望みをかけていた多くの会員が手術を受けることができなくなり、絶望の中に取り残されました。その後、事態6を受けて施設3では同手術が再開されたものの、事態8によって再度中止となっていました。


6.当患者の会の要望

甲状腺眼症は、顔つきが醜く変わってしまうことから自死を選ぶこともあるような疾患です。私たち甲状腺眼症を患う患者は疾患そのものに苦しんでいます。また、現状では、日本国内における甲状腺眼症の医療が抱える課題、さらに自らの疾患の治療をどの医療機関でどの治療法で受けるのかを選択する権利が侵害されるという人権侵害・社会的迫害にも苦しんでいます。

私たち患者は、私たちの権利が保障され、自らが選択した医療機関で自らが選択した術式での眼窩減圧術を保険で受け、疾患による醜形や視機能の障害から、そしてそれに伴う絶望から回復することを要望いたします。

これらの患者の選択の自由を奪うことは「憲法違反」であり「人権侵害」の状態です。改善を強く要望いたします。


結語

私たち患者は甲状腺眼症に苦しむのみならず、日本国内における甲状腺眼症の医療が抱える課題や甲状腺眼症に対する眼窩減圧術の保険適用に関する様々な決定に翻弄されてもきました。

当患者の会は、私たち甲状線眼症の患者が安心して治療を受けることができるように、現在私たち患者の権利を侵害し、私たち患者を苦しめている眼窩減圧術の保険適用に関する問題を解決したく、以下の二点を陳情いたします。


(1)全国一律で甲状腺眼症に対する眼窩減圧術を健康保険K235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)の適用とする。

(2)全ての術式の甲状腺眼症に対する眼窩減圧術を健康保険K235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)の適用とする。


 また、将来、眼窩減圧術以外の甲状線眼症に対する治療が保険適用から外されたり不当に査定されたりし、私たち患者の権利が侵害されることがないように、以下を要望いたします。

(3)日帰り/入院でのステロイドパルス療法や眼へのステロイド注射、放射線治療等、非標準的治療も含めた甲状腺眼症に対する治療を引き続き適正な保険適用とし、かつ新規にそれらの治療が開始される都道府県でも適正な保険適用とする。


陳情書に書いてあります事項について善処の上、ご承認いただきますよう、お願いいたします。


以上






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